診療科案内

機能神経外科について

機能神経外科とは脳神経外科の一分野であり、脳や脊髄に外科的にアプローチすることにより、症状の改善や機能の回復を図ることと定義されています。現在、対象の病気には「パーキンソン病」、「振戦」、「ジストニア」、「難治性疼痛」および「痙縮」があり、治療方法としては「脳深部刺激療法(DBS)」、「定位的凝固(破壊)術」、「脊髄刺激療法(SCS)」、「ボツリヌス療法」、「バクロフェン髄注療法(ITB)」があります。

当院の特徴は、機脳神経外科のすべての治療を一施設で行う事ができる点です。脳深部刺激療法だけや脊髄刺激療法だけなど、一つの治療法だけではなく、当院では上記の治療方法全てを行なっています。それぞれの病気や症状に対して複数の治療方法を検討し、最適なものを選択する必要があると考えています。

病気・症状ごとの代表的な治療方法

パーキンソン病、振戦、ジストニア

脳深部刺激療法(DBS)

不随意運動症といった病気に分類され、脳深部刺激療法(DBS)や定位的凝固(破壊)術が主に行われます。症状の原因と考えられている脳の基底核という部分に電極をおき微弱な電気を流したり、一部を凝固(破壊)することで症状の軽減を図ります。脳深部刺激療法(DBS)の場合、刺激装置を胸部に植え込み、頭部の電極と接続し外部から刺激の調整を行います。最近、より細かな調整ができる刺激装置が発売され、今までより良い効果と副作用の軽減が期待できる可能性があります。ジストニアは症状の範囲や部位により、ボツリヌス療法または脳深部刺激療法(DBS)、定位的凝固(破壊)術で治療します。

薬治性疼痛(慢性的な重度の痛み)

脊髄刺激療法(SCS)

薬でも緩和できない痛みに対する治療として、脊髄刺激療法(SCS)があります。脊髄の硬膜の外に電極をおき微弱な電気を流すことで、疼痛の緩和を図ります。一般的に50%の患者さんに有効で、50%の痛みが緩和すると言われていますが、腰椎の手術後も痛みが続く脊椎手術後疼痛症候群(FBSS)や、骨折・打撲および神経の障害後に生じる重度の慢性の痛みである複合性局所疼痛症候群(CRPS)などでは80%程度で有効です。脳深部刺激療法(DBS)と同様に、機器の進歩により新しい刺激パターンが可能となり、今までは治療が難しかった痛みにも有効だと報告されています。また、痛みには下記に述べる痙縮を原因とすることも多くあり、ボツリヌス療法やバクロフェン髄注療法(ITB)を行うことで症状がよくなることがあります。

痙縮

脳卒中をはじめとする脳や脊髄の後遺症である痙縮に対する治療として、ボツリヌス療法とバクロフェン髄注療法(ITB)があります。脳卒中だけでなく、頭部外傷、脊髄損傷、低酸素脳症、痙性対麻痺(脊髄小脳変性症)などの神経難病を原因とする痙性・痙縮を対象としています。ボツリヌス療法は痙縮の原因となっている筋肉に注射することで、バクロフェン髄注療法(ITB)は痙縮の治療薬であるバクロフェンを持続的に脊髄に送り込むポンプを植え込むことで痙縮を改善させます。痙縮の部位、範囲、強さなどからいずれかの治療を選択しますが、症状によっては両方の治療を組み合わせます。痙縮の治療では、なるべく早くからの治療と適切な治療方法の選択が重要だと考えています。

上記のように、それぞれの病気や症状には複数の治療選択肢があり、適切な方法を選択する必要があります。受診を希望される方は下記予約センターにご連絡下さい。
また、機能神経外科治療に興味があり、話を聞いてみたいという方向けのオンライン(対面)での治療相談会も行なっています。紹介状は不要で、ご家族の方のみでも相談できます。1時間1組のためゆっくりお話しすることができます。

名古屋セントラル病院 予約センター

TEL
052-452-3126052-452-3126

脳神経外科 医師 竹林成典 月・火曜日 午前・午後

午後の予約は専門外来、治療相談会は月・火曜日の16:00~17:00となっています。

当院における治療方法の特徴

脳深部刺激療法(DBS)

当院の脳深部刺激療法(DBS)の特徴は、始めから最後まで全身麻酔で行い、痛みや苦痛の少ない手術を行なっていることです。

脳深部刺激療法(DBS)は、局所麻酔と全身麻酔の組み合わせで行うことが多く、脳に電極を植え込む前半部分は局所麻酔で、胸部に刺激装置を植え込み電極と接続する後半部分は全身麻酔で行います。また、前半と後半部分を二日間にわけて行う場合もあります。

前半部分は局所麻酔のため、「頭部を固定する金属製の枠(レクセルフレーム)」を4本のネジで固定する際(写真)や刺激電極を脳に挿入する数時間は、意識がある状態で手術を行うことになります。実際、手術を受けた患者さんからは、この前半部分が相当苦痛だったため、他の人には手術を安易に勧められないといった意見があります。

そのため、当院では金属製の枠をつける前から、すべての手術行程を意識の無い全身麻酔の下で行い、痛みや苦痛を最小限にするようにしています。一部の脳深部刺激療法(DBS)を除き、9割以上の手術は全身麻酔で可能だと考えています。

治療方法の詳細については、こちらを参照して下さい。

脊髄刺激療法(SCS)について

当院での脊髄刺激療法(SCS)の特徴は、手術を試験(トライアル)と植え込みの2回にわけて行っていることです。

脊髄刺激療法(SCS)の手術は、電極を植え込みその効果があれば刺激装置を植え込んで接続する「サージカルトライアル」と、試験と植え込みを完全に分けて行う「パンクチャートライアル」があります。

サージカルトライアルは、1回の入院で電極と刺激装置の植え込みまで行えるのがメリットですが、試験(トライアル)期間が最長で1週間程度と短くなります。よって、効果判定に迷うことが多く、刺激装置を植え込んだものの最終的に効果がなかったとなる可能性があります。

その点、パンクチャートライアルは試験(トライアル)と植え込みの2回の入院が必要ですが、試験(トライアル)を最長2週間行うことが可能となり、より確実な効果判定が可能となります。よって、実際に効果があった方のみ、刺激装置の植え込みを行うことになります。

治療方法の詳細については、こちらを参照して下さい。

バクロフェン髄注療法(ITB)について

当院でのバクロフェン髄注療法(ITB)の特徴は、ボツリヌス療法との適切な使い分けと豊富な治療経験です。

バクロフェン髄注療法(ITB)は痙縮治療の一つであり、他にボツリヌス療法があります。一般的にボツリヌス療法でコントロールできない痙縮の治療としてバクロフェン髄注療法(ITB)が考えられていますが、両療法は全く別の治療方法であり使い分けが重要だと考えています。バクロフェン髄注療法(ITB)とボツリヌス療法は同じ痙縮治療ですが、利点や欠点、期待できる効果が違います。病気や症状、治療時期によって最適な治療方法を選択し、または両療法を併用することで最適な痙縮治療が可能となります。

脳卒中(脳梗塞、脳出血等)や脊髄損傷、痙性対麻痺(脊髄小脳変性症)に対するバクロフェン髄注療法(ITB)の手術に加え、ボツリヌス療法も数多く行なっており、適切な痙縮治療が提供できます。

最近は早期の痙縮治療が重要だと考え、近隣のリハビリテーション病院と連携して治療を行なっています。

バクロフェン髄注療法の詳細については、こちらを参照して下さい。

ボツリヌス療養の詳細については、こちらを参照して下さい。