診療科案内

狭心症とカテーテル治療

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、がん・脳卒中と並び日本人の三大死因のひとつで、生活習慣の欧米化や人口の高齢化に伴い患者数が増加しています。ひとたび心筋梗塞を発症すると死に至る恐れもある反面、早期発見により効果的な治療が可能です。また服薬や食事・運動不足・喫煙といった生活習慣を見直すことで予防できることもあります。ここでは、狭心症や心筋梗塞が起こる仕組みと治療についてご説明いたします。

狭心症とは

心臓の表面を走行する冠動脈

狭心症は、冠動脈(又は冠状動脈)が詰まって狭くなり、心臓を動かす筋肉である心筋に十分な酸素や栄養が届かなくなることにより胸の痛みや締め付け、圧迫感が生じる病気です。冠動脈は、図のとおり大動脈から分岐し心臓の表面を走行しています。冠動脈が狭くなり塞がる前の状態が「狭心症」であるのに対し、冠動脈が塞がって血液が流れなくなった状態を「心筋梗塞」と呼びます。血液が流れなくなった心筋は、短時間のうちに壊死し、再生することもありません。

狭心症の原因と症状

狭心症の原因の多くは、動脈硬化による冠動脈狭窄です。高血圧、脂質(コレステロール)異常、糖尿病、喫煙その他さまざまな要因により、血管が障害・修復される過程でプラークと呼ばれる血管壁の盛り上がりが形成されます。プラークが大きくなって血管内腔が狭くなると狭心症を起こします。さらにプラークが破れると、そこに急速に血の塊である血栓ができ、血管が完全に塞がれてしまうと心筋梗塞になります。

動脈で血栓ができるまでの過程

心筋梗塞では、胸の痛みや締め付けられるような圧迫感が30分以上持続し、冷汗をかくなどただならない痛みを伴うことが多く、安静にしていても治まりません。一方、生体に備わる血栓を溶かす働きにより血流が再開し、症状は数分程度と一過性で治まることが多くあります。このときが心筋梗塞を起こす前に安全に治療できる最後のチャンスなのですが、残念なことに症状が治まることで軽く考えて放置してしまう人が多くいます。そのまま放置すると近いうちに再び血管が塞がり今度は血流が再開せず心筋梗塞を発症してしまいます。糖尿病、肥満、高血圧症、高尿酸血症、高脂血症などの持病がある方やタバコを吸う方で、胸の痛みや違和感を一度でも感じたら、狭心症や心筋梗塞を疑って早目に医師に相談することをお勧めします

主な症状と発生部位

症状 部位 タイミング
・締め付けるような痛み
・圧迫感
・重圧感
・息苦しさ
・吐き気
・冷や汗
・前胸部(中央から全体)
・胸背部
・上腹部
・左腕
・喉
・下あご
・早歩きする
・階段や坂道を上る
・重いものを持つ
・心理的ストレスを受ける
・急に寒いところに出る

治療法について

狭心症の治療法は薬物療法と手術に大別されます。そのうち手術には、内科的治療のカテーテル・インターベンション(PCI)と外科的治療の冠動脈バイパス手術(CABG)があります。カテーテル・インターベンションは、体への負担が少なく入院日数も短いメリットがありますが、重篤な症状には対応できなかったり、冠動脈バイパス手術に比べて再発率が高かったりするなどのデメリットもあります。当院循環器内科では、薬物療法のほかカテーテル・インターベンションを行っております。

カテーテル・インターベンション

カテーテル・インターベンションの流れ

カテーテル・インターベンションは、「カテーテル」という細い管を通して冠動脈を拡張する(狭いところを広げる)手術です。足の付け根や手首の動脈から先端に細長いバルーン(風船)をつけたカテーテルを入れ、冠動脈の狭まった箇所でバルーンを膨らませ血管を内側から押し広げます。また、バルーンを膨らませて、塞がった血管とともにバルーンの外側に折りたたまれた状態で装着されたステント(網目状の金属チューブ)を押し広げて留置することで、血管の内腔を保持して再度詰まらないようにすることがあります。ステント留置後、バルーンをしぼませて引き抜くと、血管が押し広げられたままになり、血流が改善します。

この治療には、ステント留置後の内膜増殖を抑制する薬剤を溶け出させることで再狭窄を予防するように工夫したステントが用いられます。この場合、ステントの金属が血管内に露出している期間が長いため、抗血小板薬といわれる血栓予防薬を通常2種類、血管の内膜の再生が完了するまでの期間(半年~1年程度)服用し続けなければなりません。