心臓カテーテルアブレーション治療(経皮的心筋焼灼術)
当院循環器内科では、各種頻脈性不整脈に対して心臓カテーテルアブレーション治療(以下、アブレーション)を実施し、日本不整脈心電学会不整脈専門医研修施設の認定を受けています。2017年9月からは学会認定不整脈専門医(後藤裕美主任医長)、設備、治療件数などの要件を満たし、発作性心房細動に対して、クライオ(冷凍凝固)アブレーション(以下、クライオ)を実施しています。また、2020年8月には新しい心臓血管専用造影装置を導入し、これまでより広い視野がみえるようになり安全に、かつ少ない被ばく線量で治療することが可能になりました。
頻脈性不整脈とは
頻脈性不整脈の症状には動悸症状が多いのですが、何も症状がない場合もあります。一般に行われている心電図の検査で不整脈かどうかを判断します。心電図は心臓の筋肉に伝わる電気の流れを体の表面から記録しています。通常心臓の電気刺激は心臓の一番上の洞結節という場所から発生し、左右の心房全体に伝わり4つの部屋の真ん中の房室結節というところから下の部屋の左右の心室に伝わります。
このように電気信号が正常に流れないものがすべて不整脈となり、通常よりも脈が速くなるものを頻脈性不整脈といいます。頻脈性不整脈の中には、脈がとぶ期外収縮や脈が規則正しく早くなる発作性上室性頻拍・心室頻拍、脈がばらばらとなる心房細動、命に危険を及ぼす心室細動などたくさんの種類があり、それらすべてを不整脈といいます。頻脈性不整脈の中でも現在もっとも多いものが心房細動です。心房細動の患者数は100万人を超すともいわれています。
心房細動では心房がおおよそ1分間に400~600回も不規則に動いています。まるで「心房が震えている」ように見えます。その結果、心房の中で血液の淀みができて血の塊が作られやすくなり、それが心臓から出ていくと脳の血管につまる脳梗塞の危険性を高めます。
心房細動に対する治療法は、以前は薬による治療が一般的でしたが、アブレーションが普及したことにより、より安全に治療できるようになりました。成功率もあがり現在ではアブレーションの治療が増加しています。
心臓カテーテルアブレーション治療
心臓カテーテルアブレーション治療とは、治療用のカテーテルを太ももの付け根から血管を通じて心臓に挿入し、カテーテル先端から高周波電流を流して焼灼(焼いて治療すること)することで不整脈を治療します。
例えば、心房細動という不整脈の場合、左心房にある肺静脈の血管内やその周囲から発生する異常な電気信号がきっかけとなって起こることが多いため、通常4本の肺静脈を囲むようにして治療を行い、肺静脈からの異常電気信号が心臓全体に伝わらないようにします。近年、心房細動に対する新しいアブレーション治療法として膨らませた風船を肺静脈の付け根にあて冷凍凝固して治療するクライオアブレーションが行われるようになりました。
従来の高周波カテーテル焼灼術(以下、高周波焼灼術)はカテーテルで点状焼灼を繰り返して左心房と肺静脈を電気的に遮断していたのに対し、クライオはバルーン形状のカテーテルを肺静脈入口部に当てて亜酸化窒素ガスで円周状に冷凍し電気的に遮断するため、手技時間が短縮できます。また高周波焼灼術に比べて治療中の血栓形成リスクが低く、痛みが少ないなどの利点も報告されています。現在発作性心房細動や1年以内持続している心房細動がクライオの対象になります。
受診から退院までの流れ
- アブレーションが必要かどうか、行うかどうかの相談をします
- アブレーションの日程を相談し決定します
- 外来で受診当日または後日に予約して検査(採血、胸部レントゲン、心電図、心臓超音波検査、心臓のCT検査など)を行います
- 基本は手術日当日の入院で、入院後に準備をして昼頃からアブレーションを行います
- 手術時間は3時間前後ですが不整脈の種類や症例によって長くなることもあります
- 局所麻酔または全身麻酔で行います。心房細動のアブレーションは基本全身麻酔で、手術中は意識がない状態で行います。その場合、手術中の痛みなどは感じません。
- 手術翌日の朝まではベッド上で安静にします
- 手術翌日は病室で自由にしていただき心電図モニターで脈の様子を観察します
- 基本は2泊3日入院ですが状態によって長くなることがあります
担当医(後藤裕美医師)からひとこと
常に安全第一で丁寧な治療を心がけています。当院は大きい病院ではありませんが、そのために融通が利きやすいというメリットがあると思っています。手術を受ける患者様は仕事をしている方や忙しい方も多く、なるべく日程や治療法などご希望にこたえられるよう努力しています。医師、看護師、技師などチーム一丸となって治療にあたらせていただきます。