地域医療連携

病診連携勉強会

高齢者心不全について

【テーマ】
高齢者心不全について
【講演者】
循環器内科 副医長 太田 智之
高齢者心不全のmalignant cycle

10年以上前の心不全入院患者の平均年齢は71歳で、80歳以上の高齢者の入院患者は28%程度であった。では最近はどうであるかというと、平均年齢は76歳と10年前と比較し5歳ほど上昇しており、さらに驚くべきは、80歳以上の患者が、約半分ほどいるということである。現在では「心不全=高齢者」と言っても過言ではない疾患となっている。高齢者心不全の特徴としては、合併症が多く併存症も多い。フレイルがあり、障害があり、それぞれが単独ではなく、重なっているのが高齢者心不全の特徴であり、高齢者心不全を診て行くことの難しさである。こういった背景のある患者に、急性のストレス(転倒や感染)がかかることで容易に心不全は増悪し、非代償性の心不全に陥る。なんとかうまく治療出来て退院できたとしても、どうしても体力が落ちたり、呼吸苦、倦怠感が残ったり、活動性が低下してしまう。この状態をずっと繰り返すマリグナントサイクルになってしまう。

高齢者心不全再入院の原因

では、心不全を管理して行く上での目標はなにかというと、急性イベント、即ち再入院予防し進行を緩徐にすることである。最大の目標は再入院の回避と言える。そして、再入院の原因としては、医学的要因のみではなく、社会的要因、患者要因を含めた、大きく3つがあげられる。全ての要因に関して、医師のみで対応して行くことは不可能であり、他職種の人がそれぞれの専門性をもって接することが必要である。大勢の人で一人の患者さんに接することにより、一人で診療していては気づかないことも発見でき、それが心不全再入院の予防につながると考えられる。特に社会的要因への介入には、社会福祉支援、地域連携が重要であり、かかりつけ医の先生方と密に連携をとり、高齢者心不全治療に対し取り組んで行きたいと思う。