地域医療連携

病診連携勉強会

認知症について

【テーマ】
認知症について
【講演者】
神経内科 副医長 加子 哲治
はじめに

認知症患者は増加の一途を辿っており、全国の患者数は約485万人まで増加している。これに加え認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)患者が約400万人であり、高齢化に伴い現在も増加の一途をたどり、人口の10%に達するのも時間の問題といわれている。神経内科外来においても診療の機会は非常に多く、認知症を有すると考えられる患者に対して診察・精査を行っている。

うつ病や甲状腺機能低下症、正常圧水頭症などは認知症によく似た症状を呈するが病態は異なり治癒可能である。頭部画像検査や血液検査などを順次行い、このような「治る認知症」を見落とさないことが重要である。一方で認知症と診断ができても、どのタイプの認知症であるかはしばらく経過観察しないと判断できない場合も多い。アルツハイマー型認知症の他にも幻視やパーキンソン症状が特徴的なレビー小体型認知症や、性格変化が早期に出現する嗜銀顆粒性認知症など様々な認知症が存在し、非典型的な所見を呈すればしばしば鑑別困難となる。
アルツハイマー型認知症におけるドネペジル(アリセプト®)などの治療薬は認知機能の改善効果は1年程度と短期間であり、どちらかというと行動心理症状(BPSD)を緩和させる性格が強い。ただし症状が強い場合には抗精神病薬の併用が必要となる症例も多い。これらの薬物療法は、実は「家族の介護負担を軽減すること」に主眼を置いている。


患者さんへの教育目標

認知症の診療に当たり、本人への検査・治療に加え家族へのケアや正しい情報の共有が重要である。例えば、認知症は加齢に伴う物忘れとは異なり疾患であることを認識してもらうこと、薬物治療の効果と限界を明確に説明すること、介護負担を抱える家族のために介護保険制度の利用や認知症初期集中支援チームの介入を提案する、などである。

認知症患者の在宅での長期療養を支えるためには、介護者の確保やサービスの積極的な利用に加えて在宅支援に熱心な主治医の存在が不可欠であり、今後も認知症診療に一層力を入れてゆく所存である。