地域医療連携

病診連携勉強会

尿路感染症
~診断、入院要否の判断、適正な抗生剤使用を中心に~

【テーマ】
尿路感染症~診断、入院要否の判断、適正な抗生剤使用を中心に~
【講演者】
泌尿器科 副医長 古澤 淳

無症候性細菌尿

無症候性細菌尿の頻度

細菌尿を認めるが無症状の状態。 例外(妊婦と泌尿器科処置前)を除いて、原則的に治療は不要であり症候性尿路感染症の発症リスクを下げるエビデンスはない。むしろ、耐性菌の助長につながる恐れがある。 高齢女性では25~50%と高頻度で認められるため、仮に高齢女性が発熱を訴え細菌尿が認められたとしても、発熱源が必ずしも尿路であるとは限らず注意が必要。

ESBL産生菌

ESBL(extended spectrum β-lactamase:基質特異性拡張型βラクタマーゼ)とはペニシリン系薬のみならず、セフェム系薬までも加水分解可能な酵素であり、最近ではESBL産生菌の増加が問題。

日常診療で頻度の高い尿路感染症

急性単純性膀胱炎の起炎菌
  • 急性膀胱炎
    閉経前⇒グラム陽性菌の頻度が若干高い⇒キノロン系薬が有効
    閉経後⇒キノロン系薬の耐性率は比較的高い⇒セフェム系薬を推奨
    ESBL産生菌は約3%検出され、約70%がキノロン耐性を示すが、90%以上はホスホマイシンやファロペネムに良好な感受性を示す。
  • 急性腎盂腎炎
    尿路基礎疾患の有無により単純性か複雑性かを鑑別することが重要。
    主に超音波検査による水腎症の有無で判断する。

    単純性腎盂腎炎:起炎菌は急性膀胱炎に類似。
    若年で経口摂取良好など軽症であれば外来治療が可能。
    一方、入院治療では補液と抗生剤の点滴静注を行う。

複雑性腎盂腎炎:水腎症は腎盂内圧の上昇をきたし、細菌の腎盂粘膜から静脈への直接侵入や腎血流低下による抗生剤の腎移行性の低下をもたらすため、水腎症は重症化の指標となる。早急な泌尿器科的ドレナージ(尿管ステント、腎瘻)を要するため、入院の絶対適応。