地域医療連携

病診連携勉強会

呼吸器疾患と現在の吸入薬治療

【テーマ】
呼吸器疾患と現在の吸入薬治療
【講演者】
呼吸器内科 主任医長 竹山 慎二

吸入ステロイド(ICS)薬が1978年に発売され、80年代半ばより臨床の場で使用が活発化して喘息のコントロールが改善しました。1993年に治療のガイドラインで吸入ステロイド薬の積極的使用が記載され、更にコントロールが良好になりました。発売当初はフロンを使用したpMDI(pressurized Metered Dose Inhaler)でしたが、フロンを使用しないDPI(Dry Powder Inhaler)のフルチカゾンが発売され徐々にDPIの薬になりました。pMDIの方が抹消の気管支に移行が良い、吸入流速不足の患者さんには使用しやすいとのことでpMDIの吸入薬も増えてきています。pMDIは吸入のタイミングが合わず吸入ができていないこともあります。 論理的には薬の粒子の大きさで効果も変わってくると思いますが、私個人の感覚では使用経験上はっきりとした違いはわかりません。DPI、pMDIの使い分けは、吸入タイミングが合わない患者さんはDPI,吸入流速不足はpMDIといわれていますが、患者さん一人一人で好みが違います。処方後も考えているほど効果が出ないときには他の剤型に変更した結果効果が出ることもあります。初回処方時に高量の吸入量にして効果が不十分のときに剤型を変えています。最終的には患者さんにあった剤型、患者さんが使いやすく気に入った剤型にしています。

2002年以降、長期作用型β刺激剤(LABA)の吸入が使用され始め、吸入薬治療の喘息のコントロールは良好になってきています。気管支喘息の治療のガイドラインでは、吸入薬での治療が主体です。(図1)気管支喘息の病態が気管支の慢性の炎症であり、炎症を改善させることが治療の主であるとの考えで初期治療からICSの吸入を施行します。スッテプ1以外は病状によってLABAを使用しますのでISCとLABAの合剤の発売で患者さんの吸入治療も簡易になってきました。(図2)

薬物によるコントロール
吸入ステロイド薬+LABA
長時間作用方抗コリン薬(LAMA)

臨床治療がほとんど無効であった、COPDに対して長時間作用型β刺激薬(LABA)の吸入、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)の吸入も開発使用され、COPDの自覚症状、肺機能の改善は良好になってきました。特にLAMAの発売でCOPDの治療が積極的にできるようになりました。(図3)LAMA使用時には前立腺肥大のある方では尿閉が出現することもあります。排尿困難になったら吸入中止してください。やや口渇が出るなど副作用について初回にしっかり話しておくことが重要と考えます。

安定期COPDの管理

COPDの治療ガイドラインを示します。(図4)薬剤治療は、吸入薬による治療です。ADLの縮小傾向の患者さんに積極的に治療介入することが重要です。「最近、年のせいで息切れがするので動きたくないわ」と言われている高齢の方が実はCOPDで息切れすることも多いのが現状です。COPDの治療を行うことで呼吸苦が改善してADLが改善し下半身の筋力が戻りCOPDの予後も良くなる可能性もあります。

LAMA(抗コリン薬)+LABA(β刺激薬)

LABA,LAMAの合剤も発売され始め患者さんの吸入がより簡易になってきています。(図5)各メーカーの剤型で患者さんにあったものが必ずあると思います。COPDで息切れが出現している患者さんに積極的に吸入治療して、ADL低下を防ぐことが予後の改善につながる可能性があります。

最後に
合剤を含め吸入薬が近年多数発売されたことが、今回の発表のきっかけです。各薬剤の整理の意味も含め表示の初頭をあえて商品名に致しました。全商品を記載しているものではありません。また各薬剤に容量の違う薬剤があります。