地域医療連携

病診連携勉強会

尿路結石治療の実際

【テーマ】
尿路結石治療の実際
【講演者】
泌尿器科 主任医長(科長) 黒松 功

平成24年12月18日(火)、病診連携システム登録医の先生方をお招きして勉強会を開催いたしました。勉強会の内容をまとめましたので、以下にご紹介いたします。

尿路結石症は、遺伝要因に食文化の欧米化などが加わり、罹患率が急速に上昇している疾患です。今回の病診連携勉強会では、尿路結石の「疫学」「自然経過」「治療」「予防」という項目でお話しをさせていただきました。

疫学

我が国には世界に類をみない尿路結石に関する膨大な疫学データがあります。1965年から10年ごとに全国の主要医療施設を対象として調査が行われ、最新の2005 年には1330施設、10万例以上の症例が集積されています。1965年と2005年を比較すると、結石罹患患者の男女比は2.5:1とほぼ一定ですが、好発年齢は20-30歳代から50歳代以降へと高齢化しています。生涯罹患率は年々上昇し、最新の報告では男性は15.1%と実に7人に1人が経験する疾患となっています。Risk factorとしては肥満、高血圧、糖尿病などが指摘されており、また遺伝要因もあるのではないかと言われています。

自然経過

症状のない腎結石の70%はそのまま無症状に経過し、15%が自然排石するという報告があります。血尿、痛みなどを伴う腎結石に関してはその70%が自然排石し、残りの30%に手術が施行されています。時として大きな腎結石が無症状で発見されることがありますが、このような結石に積極的に治療を加えるかどうかは難しい判断です。また、激しい疼痛を生じることがある尿管結石ではその60%が自然排石し、特に8mm以下は自然排石の可能性が高いと言われています。

治療

尿管結石は、突然の側腹部痛で発症することが多く、診断がついたらまず除痛が必要となります。一般的にはボルタレンなどのNSAIDSの座薬が効果的です。除痛が不十分な場合に、ソセゴン(ペンタジン)の静注を追加するとほぼ疼痛緩和可能となります。
上記のごとく8mm程度までの結石では自然排石が期待できるため、3-4週間の経過観察が可能です。この際に、α1ブロッカー(前立腺肥大症治療薬)を併用すると、排石効率が上昇することがLancetに報告されています。
自然排石が期待できない結石に対する治療としては、対外衝撃波結石破砕 (ESWL)と内視鏡下砕石が施行されており、それぞれに利点・欠点があります。
ESWLは破砕手段としては最も普及している方法で、一般的には座薬程度の鎮痛で施行可能です。合併症の少ない治療ですが、X線陰性結石では焦点が合わせにくいことや固い結石、尿管に陥頓した結石では破砕効率が低くなります。内視鏡下の砕石には経尿道的アプローチと経皮的アプローチがありますが、尿管結石のほとんどには経尿道的砕石(Transurethral lithotomy:TUL)が施行されています。以前は腎と尿管の移行部付近までの砕石に限られていましたが、軟性尿管ファイバーとレーザーを組み合わせたfrexible TUL(fTUL)では腎結石の砕石も可能で、当院でも積極的に施行しています。TULは脊椎麻酔が必要で入院を要しますが、尿管から腎までの結石を一期的に治療することが可能で、レーザーを用いる場合にはほとんどの種類の結石を破砕できるという利点があります。

予防

尿路結石の発生機序はいまだ不明ですが、水分摂取が多いと再発率が低下することがわかっています(1日2リットル以上で低下)。ただし、ビール、清涼飲料水、コーヒーなどはかえって結石の形成を助長しますので、お茶の摂取に限ります。また食事摂取に関しては、月並みですがバランスの取れた食事が大事です。結石の成分にカルシウムが含まれていることが多いことから、カルシウムの摂取を制限したほうが良いと思われがちですが、これは間違いです。
カルシウム摂取を制限すると、腸管のシュウ酸吸収過多により結石となりやすいため適度のカルシウムを摂る必要があります。シュウ酸はホウレンソウ、タケノコ、チョコ、紅茶などに多く含まれていますので、過剰摂取は避けるべきです。
以上、結石についての一般的なお話しをさせていただきました。皆さんの日常診療の一助となれば幸いです。