神経障害性疼痛に対する薬物・外科治療の最新情報
平成24年4月17日(火)、病診連携システム登録医の先生方をお招きして勉強会を開催いたしました。勉強会の内容をまとめましたので、以下にご紹介いたします。
神経障害性疼痛(neuropathic pain)は、2008年に『体性感覚伝導路の損傷や病変によって直接引き起こされる痛み』と再定義された。近年、海外で神経障害性疼痛治療に関する治療指針が提案され、わが国においても2011年に『神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン』が提示された。名古屋大学脳神経外科教室は、これらのガイドラインに基づいた薬物治療が実際の臨床現場で容易に行える目的で治療アルゴリズムを作成し、2012年から運用を開始している。
神経障害性疼痛に対する第一選択薬は、すべてのガイドラインにおいてプレガバリンであり、第二選択薬として抗うつ剤が使用される。神経障害性疼痛に対するオピオイドの有効性については、これまで議論の分かれるところであった。しかし最近の多くの研究によりオピオイド系鎮痛薬が神経障害性疼痛に対して有効性を有すことが明らかとなってきた。
それを反映し海外のガイドラインでは、オピオイド系鎮痛薬を第二あるいは第三選択薬に位置付けている。日本では2011年7月に経口トラマドール/アセトアミノフェン配合錠が発売されている。トラマドールは麻薬、向精神病薬の指定を受けておらず、管理上の規制が少ないため臨床で使用しやすいのが大きな特徴の一つである。
上記の薬物治療を行っても疼痛コントロールが困難な症例が神経障害性疼痛には存在し、外科的治療も視野に入れて治療に当たる必要がある。代表的な治療として運動野刺激術(MCS: motor cortex stimulation)が挙げられる。
また最近の機器の進歩に伴い、神経障害性疼痛に対する脊髄刺激術(SCS: spinal cord stimulation)の有効性が報告されている。SCSは局所麻酔下で経皮的に脊髄硬膜外腔へ刺激電極を挿入できるため、運動野刺激術と比べ侵襲度が低いことが大きな特徴である。