地域医療連携

病診連携勉強会

非小細胞癌の治療と最近のトピックスについて

【テーマ】
非小細胞癌の治療と最近のトピックスについて
【講演者】
呼吸器内科 主任医長(科長) 秋田 憲志

平成23年8月23日(火)、病診連携システム登録医の先生方をお招きして勉強会を開催いたしました。勉強会の内容をまとめましたので、以下にご紹介いたします。

日本人の死亡原因の第1位は悪性新生物で、その中で最も多いのが肺がんです。そして、今日では1年間に約85000人が肺がんに罹患していると考えられ、その数は今後も増加傾向にあると考えられています。

非小細胞肺がん治療戦略

このなかで、肺がんの診断・治療における研究開発は国内外問わず盛んに行なわれてきました。肺がんの化学療法の領域では、特に非小細胞肺がんにおいて変革期を迎えていると考えられます。その大きな流れとして、いわゆる狭義の抗癌剤(cytotoxic agents)の開発および抗癌剤の組み合わせ・投与タイミングの研究と、GefitinibやErlotinibなどEGFR (epidermal growth factor receptor)のシグナル伝達経路を標的とした薬剤に代表される、いわゆる分子標的治療薬の開発の2つがあります。
Pemetrexedは葉酸合成阻害薬で、近年非小細胞肺がんに使用されることが承認されたcytotoxic agentです。これまで進行非小細胞肺がんの化学療法は、シスプラチン (CDDP)もしくはカルボプラチン(CBDCA)と、いわゆる第三世代と呼ばれるcytotoxic agents(Paclitaxel、Docetaxel、Gemcitabine、Navelbine、Irinotecan)との2剤併用療法が10年近く標準的治療とされてきましたが、PemetrexedをCDDPと併用した治療法が、非小細胞肺がんの中の非扁平上皮がんに限定すると、第三世代併用療法の1つであるGemcitabineとCDDP併用療法よりも生存期間を延長したという試験結果が発表され(JCO 26:3534-51)、非扁平上皮がんにおいては、Pemetrexed+CDDPが治療法として選択されるようになりました。
また、PemetrexedとCBDCAの併用療法もCDDPとの併用よりは腎毒性と消化管毒性が軽減されるため、臨床現場ではよく用いられるようになりました。BevacizumabはVEGF (vascular endothelial growth factor)の血管新生作用を阻害する目的で開発された抗体製剤で、分子標的治療薬の1つです。大腸癌に対する有効性もあり既に使用されていましたが、肺癌についてもCytotoxic agentと併用して有効性が確認され、使用されるようになりました。しかし、臨床試験で扁平上皮がんで喀血をはじめとする出血の危険性が高くなることが判明し、扁平上皮がんが除外されるようになりました。非扁平上皮がんの症例に対して、第三世代併用療法の1つPaclitaxel+CBDCAにBevacizumabを併用した場合に生存期間が延長したという試験結果が発表され (E4599試験)、Pemetrexed併用療法とともに非扁平上皮がんの新たな治療選択の1つと考えられるようになりました。

抗癌剤の価格は高騰化

しかしながら、これらの新薬はどちらも薬価が高く治療費が高騰してしまうことが懸念されています。
扁平上皮がんの化学療法については、基本的には第三世代併用療法が標準的治療ですが、ASCO (米国臨床腫瘍学会)でTS1というcytotoxic agentとCBDCAの併用療法や、nab-PaclitaxelというPaclitaxelを修飾したcytotoxic agentとCBDCAの併用が、扁平上皮がんにおいてPaclitaxel+CBDCAと比較して有効であったという報告が相次ぎ扁平上皮がんに対する治療戦略においても新しい化学療法が加わりました。2011年ASCOの報告からも分子標的治療薬の研究開発が盛んに行われており、GefitinibやErlotinib、BevacizumabをはじめCrizotinib、Sorafenib、Cetuximab、Sunitinibなど多くの薬剤が研究されています。今後これらの薬剤の開発により、さらなる治療成績の向上が期待できると考えられます。

超音波内視鏡(EBUS)を使用したTBLB

肺癌の診断のため気管支鏡検査がおこなわれますが、超音波内視鏡を併用することにより、TBLBの安全性と診断確定率の向上が期待されます。名古屋セントラル病院では超音波内視鏡検査を導入し、肺野末梢病変で診断確定が比較的難しい症例からも確定診断が得られ易くなり、より質の高いTBLB検査を行うことが可能になりました。