地域医療連携

病診連携勉強会

膵腫瘍の診断と外科治療

【テーマ】
「膵腫瘍の診断と外科治療」
【講演者】
消化器外科主任医長 大島 健司
大島 健司

平成23年1月29日(日)、病診連携システム登録医の先生方をお招きして勉強会を開催いたしました。勉強会の内容をまとめましたので、以下にご紹介いたします。

1.膵癌の治療成績

膵癌の治療成績を評価する基準としては、わが国では日本膵臓学会による膵癌取扱い規約が、国際的にはUICCのTNM分類が広く用いられている。 膵癌症例の切除率は、ここ20年間はおよそ40%で推移している。これは逆に言えば膵癌が発見された時点で切除不可能な症例が60%に及ぶということであり、膵癌早期診断の困難さを示唆しているともいえる。胃癌や大腸癌に比べてもともと予後のよくない膵癌であるが、その中でも比較的予後のよいstage Ⅰ、Ⅱの症例はわずかであり、圧倒的多数をstage Ⅲ、Ⅳの症例が占めている。そのため外科手術後の5年生存率も10~20%程度にとどまっており、とても満足できる成績ではない。 膵癌治療の成績向上には、より早い段階での膵癌の発見、診断が重要な課題の一つといえる。

2.膵癌の診断

膵癌診断アルゴリズム

膵癌の診療にあたる臨床医に実際的な診療指針を提供するために、EBMに基づいた膵癌診療ガイドラインが刊行されている。それによれば、膵癌の診断は、腹痛、黄疸、腰背部痛などの臨床症状に加え、膵癌の家族歴、糖尿病、膵炎の既往等の危険因子を認める場合には、アミラーゼなどの血中膵酵素やCA19-9などの腫瘍マーカーを測定し、画像診断として腹部USやCTを施行することが勧められている。その結果膵癌が疑われれば、治療方針決定のためにも質的診断が必要となるので、MRCP、EUS、ERCP、PETなどを組み合わせて行うことが勧められている。確定診断のために細胞診や組織診が必要となる場合もあるし、また病期診断にはヘリカルCTやEUSが勧められる。ガイドラインには膵癌診断アルゴリズムとしてまとめられている。

3.膵癌の外科治療

門脈カテーテルバイパス法
Isolated PD

ガイドラインでは、stage Ⅲまでの症例とstage Ⅳでも切除可能な症例には外科切除が勧められている。外科治療における問題点としては、膵全摘の是非、リンパ節郭清の至適範囲、血管合併切除の意義、神経叢郭清の意義などが挙げられる。
免疫染色を利用した検討の結果、膵癌の進展様式は連続性進展であり、必ずしも膵全摘は必要ないことが示されている。リンパ節転移は膵頭部癌症例では70%以上に転移が認められたとする報告が多く、大動脈周囲リンパ節へも20%程度の転移頻度が報告されている。リンパ節転移が高度であっても切除例のほうが非切除例よりは生存率が良好であることが示されており、リンパ節郭清は十分に行うべきと考えられる。血管合併切除については、剥離面の癌浸潤陰性を得るためには必要と考えられ、門脈バイパスカテーテル法を用いた、より安全な方法で門脈合併切除を行っている。また、神経叢郭清については浸潤の有無につき血管内超音波検査を利用して判断する場合もある。
わが国ではリンパ節や神経叢の拡大郭清を伴う、いわゆる拡大手術が主流となってきたが、標準手術と比較したRCTでは予後に差がないという結果が示され、拡大手術を疑問視する向きもあるが、今後、より早い段階で膵癌が発見、診断されるようになれば、そのような症例にこそ拡大手術が意味をもつのかもしれない。
当科では、膵への流入血流と膵から流出する血流を膵切除に先立って遮断することで、癌細胞の播種、脈管内への流出を防ぐことができると考え、膵頭部癌に対しては、Isolated Pancreatoduodenectomyを施行している。

4.膵嚢胞性腫瘍の診断と外科治療

Operative Procedures for IPMNs and MCNs of the Pancreas

膵嚢胞性腫瘍には、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、充実性偽乳頭腫瘍(SPT)、漿液性嚢胞腫瘍(SCT)などがあり、その診断には、US、CT、MRCP、EUSなどが有用である。
IPMNやMCNは病理学的に腺腫から異型性が増すにつれ、境界病変、癌へと進展すると考えられている。切除例の検討から浸潤癌でなければ予後の良好な疾患と考えられ、膵実質への浸潤の有無により切除術式を選択すべきである。浸潤があれば、リンパ節郭清を伴う通常の膵切除を行い、浸潤がなければ、腫瘍の占居部位により膵頭十二指腸第Ⅱ部切除術(PHRSD)や膵中央切除術(MP)、脾温存膵体尾部切除術(SPDP)などの術式を選択している。

5.ビデオ供覧

「膵頭部癌に対する門脈合併切除を伴うIsolated Pancreatoduodenectomy」のビデオを供覧した。