地域医療連携

病診連携勉強会

喫煙による健康被害と喫煙外来の現状

【テーマ】
「喫煙による健康被害と喫煙外来の現状」
【講演者】
呼吸器内科主任医長 秋田 憲志
秋田 憲志

平成21年4月21日(火)、病診連携システム登録医の先生方 をお招きして勉強会を開催いたしました。勉強会の内容をまとめ ましたので、以下にご紹介いたします。

喫煙がもたらす害

喫煙は多くの疾病の危険因子になり、喫煙する本人だけでなくその家族をはじめ周囲の人にも健康被害をもたらすといわれています。実際に喫煙者と非喫煙者の間で生命予後に約10年の開きがあり、喫煙により肺がんや喉頭がんをはじめとする悪性腫瘍やCOPD等の呼吸器疾患、虚血性心疾患、脳血管障害が増加し、2型糖尿病やメタボリックシンドローム、皮膚の老化に対しても悪影響があることがデータで示されています。受動喫煙については大人だけでなく、責任のない子供たちまでがその被害者になるため、より深刻と考えられます。例えば母体からの受動喫煙による影響として、SIDS、低体重出生、小児がん、子供の肺機能低下、小児の糖尿病等、多くの疾病との関連が指摘されており、出生後の受動喫煙の影響として、気管支喘息、気管支炎等、小児科受診理由の上位疾病のほとんどが受動喫煙関連疾患であることも指摘されています。また小児の数学力や読解力が受動喫煙により低下することも興味深いことです。

禁煙社会実現に向けた取組み

国際社会においては既に禁煙社会実現に向けた枠組みづくりが始まっており、2003年にWHO(世界保健機関)において「タバコ規制枠組み条約」が締結され、タバコ消費とタバコ煙への曝露を減らすための施策についての取り決めが行われ、2005年2月に日本でも発効し「締約国は、タバコの使用の中止及びタバコへの依存の適切な治療を促進するため、自国の事情及び優先事項を考慮に入れて科学的証拠及び最良の実例に基づく適当な、包括的及び総合的な指針を作成し及び普及させ、並びに効果的な措置をとること」が求められるようになりました。さらに2007年には「受動喫煙防止条約(タバコ規制枠組み条約第8条)」も締結され、タバコの煙にさらされることが死亡や疾病につながることが科学的根拠により証明されていることを各国が認識し、職場や公共の場での喫煙についての施策を推進しなくてはならないことになりました。これをうけて2010年2月までには日本でも公共の場、職場、レストラン、交通機関など例外なく禁煙にするように法整備がすすめられるとのことです。

喫煙治療

今日、喫煙習慣は単なる個人の嗜好による生活習慣ではなく「ニコチン依存症」という疾病であるという概念が認知されるようになり、2006年4月に「ニコチン依存症管理料」が新設され、喫煙習慣の本質であるこの「ニコチン依存症」に対して、医療として治療を行うことができるようになりました。禁煙治療は、日本循環器学会・日本肺癌学会・日本癌学会が共同で作成した「禁煙治療のための標準手順書」を基本として進められます。実際には、喫煙治療は①ニコチンによる薬物中毒の治療と、②喫煙中心の生活習慣を改善していく行動療法の2つを軸として進めていきます。①については禁煙補助薬を処方します。禁煙外来で処方する補助薬はニコチンを補充する貼り薬(ニコチネルTTS)やニューロンにあるニコチン受容体にニコチンが結合することを阻害する昨年薬価収載された内服薬(バレニクリン)を使用します。禁煙外来では、実際には②の行動療法をいかに指導できるかが成否を左右します。その理由としてニコチン依存状態から脱却できても、タバコを吸って気持ちよかった記憶は消去されないため、1本くらいならいいだろうという甘さからニコチン依存が再燃してしまう失敗パターンが多いためです。このため行動療法では、禁煙開始時に、喫煙関連のアイテムを処分し、1本くらいと思ったときにすぐに吸えないようにするなどの環境改善。起床時や、食後、宴席など喫煙習慣が染みついている状況における行動パターン変更法。さらには喫煙衝動にかられたときにガムや氷を使用する代償行動を指導します。最近、日本禁煙学会から1年間禁煙ができたら禁煙成功とみなす指針がだされましたのでまずは1年禁煙を目指して指導をおこなっていくことになりそうです。

名古屋セントラル病院における禁煙外来

名古屋セントラル病院でも2006年7月の病院移転にともない施設基準を満たし禁煙外来を本格的に始動しました。2006年9月から2009年3月までに82名が禁煙外来を受診しました。使用した禁煙補助薬はニコチネルTTS/バレニクリンが55名/27名とニコチネルTTSが多かったですが、2008年3月にバレニクリンが薬価収載され、6月以降当院で使用可能になってからは、ほとんどの方がバレニクリンを使用しております。3カ月禁煙達成率を見てみますと、評価可能70名中47名(67.1%)で達成しており、ニコチネルTTS/バレニクリンでは64.6%/72.7%とバレニクリンで達成率が高くなる印象を受けました。

若年層の高い喫煙率

日本人の喫煙率は低下傾向にはありますが、他国と比較すると依然として高く、特に20~30代の若年層の喫煙率が高いことが問題であると思われます。また当院で禁煙外来を受診した人も喫煙率の割に20~30代の若年者の割合は低く、喫煙による健康被害への意識が低い世代なのかもしれません。タバコを吸い始めないように教育することと、若い世代の喫煙者にいかに禁煙誘導をしていくかが本邦における重要な課題の1つと考えられます。