地域医療連携

病診連携勉強会

画像診断の最近の話題(CT・MRIを中心に)

【テーマ】
「画像診断の最近の話題(CT・MRIを中心に)」
【講演者】
放射線科主任医長 中根 正人
中根 正人

画像診断の分野は日々目覚ましい進歩を遂げており今も衰えない。また様々な問題点も出てきて いる。今回、病診連携勉強会において主にCT・MRIを中心とした画像診断の最近の話題を概説さ せていただいた。

拡散強調画像

MRI技術の進歩により拡散強調画像が実用可能となり、脳梗塞の早期診断が飛躍的に向上した。現在では脳梗塞の診断には必要不可欠な診断方法としての地位を確立している。拡散強調画像とは水分子の拡散運動(ブラウン運動)を画像化したものである。拡散強調画像では、(超)急性期梗塞巣が水分子の拡散の低下を反映して高信号域として描出され、発症後数時間で梗塞巣を検出することが可能である。これにより超急性期脳梗塞の検出および多発梗塞巣の新たな梗塞の検出などに有用である。 さらに脳梗塞以外の疾患への応用も進んでおり、脳腫瘍、脳膿瘍、脳炎などの診断において有用性が認められてきている。また、躯幹部疾患への応用も確立されつつある。 最近、頭部領域において拡散テンソル画像(diffusiontensorimage,DTI)を利用した手術支援やより高度な臨床応用も可能となってきた。拡散テンソル画像とは、脳や脊髄の神経線維(髄鞘)の方向や拡散を規制する強さを画像に表す方法である。その拡散テンソル画像の一つとして、神経線維の方向による拡散異方性を利用し脳白質線維群を画像化したtractographyがある。

超急性期脳梗塞
超急性期脳梗塞
MR tractography
MR tractography

肝特異性MR造影剤

最近、肝特異性MR造影剤(商品名:EOBプリモビスト、販売:バイエル薬品)が発売され、当院でも使用可能となった。この肝特異性MR造影剤は、従来からMRI用造影剤として使われてきたガドリニウム造影剤にエトキシベンジル基を導入して肝細胞への特異性を持たせ、胆汁産生能を持つ正常肝細胞に取り込まれる造影剤である。実際には、この造影剤を急速静注後しダイナミック像を撮像することで、従来から使用されている細胞外液性造影剤と同様に血流情報を知ることができ、肝細胞造影相と呼ばれる静注20分後の撮像では、機能が失われた肝細胞癌などの病変にはこの造影剤が取り込まれず、正常肝組織(高信号)と病変(低信号)とを区別できる。診断に難渋していた症例の評価に新たな可能性をもたらすものと考えられている。

造影MRA

IC stenosis?→×

非造影MRAは造影剤を使用しないため、低侵襲でスクリーニング検査として有用であるが、スピンの飽和と位相分散による信号低下が起こりやすく、狭窄病変に対する偽陽性や過大評価を招くことがある。特に頸部領域では臨床上最も関心の高い内外頚動脈分岐部付近で、狭窄の評価が困難な場合がある。最近ではMRI装置・技術の進歩に伴い高速撮像が可能となったため、造影剤急速静注による造影MRAが撮像可能となり、より精度の高い検査が行えるようになった。CT造影剤アレルギーの患者さんには良い適応の一つである。ただし造影剤を使用するため煩雑さや侵襲度が増し、血管壁の石灰化、ステント後の内腔の評価が困難などの問題点もある。

ガドリウム(Gd)MR造影剤と腎性全身性線維症

ガイドラインに関する造影剤の使用について

NSFは、皮膚における結合組織の過形成を特徴とする1997年に初めて報告されたまれな疾患であり、皮膚の硬化・肥厚が主体で肺・肝・筋・心臓などの多臓器が侵されることもあり、死に到ることもありうる疾患である。最近、重症腎障害患者のMRI検査におけるガドリニウム造影剤使用との関連性が指摘されている。よって当院もGd造影剤使用に関するガイドラインに沿って、性別、年齢、および血清クレアチニン値から推定GFR(推定糸球体濾過量:eGFR)を算出して腎機能を評価し、eGFRが30ml/min/1.73m2未満(透析症例を含む)の場合には、Gd造影剤使用後のNSF発症の危険性が高いとの理由からGd造 影剤の使用を原則禁止している。

最近のMR装置 -3T(テスラ)MRI

超高磁場MRIは現在最も注目を集めている装置の一つであり、導入施設も増えている(当院での導入は現在のところ未定であるが)。3TMRIの最も大きな魅力は高いS/N(信号雑音比)である。S/Nは静磁場磁束密度に比例するので、当院で導入されている1.5TMRIの2倍のS/Nが得られる。よって1.5Tと同じ撮像時間で高解像度画像が得られるか、または同じ空間分解能で撮影時間の短縮が可能である。また磁化率効果や化学シフトが大きくなることにより、これを応用した画像の向上が期待できる一方、アーチファクトの増強などといった欠点にもなりうる。その他にも様々な特徴・問題点があり、臨床的有用性については未知数の部分も多い。

最近のCT装置 -面検出器(320列)CTなど

CTの分野に関しては、面検出器(320列)CT、2管球CTなど多くの新しい技術導入が進みつつある。面検出器(320列)CTに関しては1回転で脳や心臓全体をカバーすることができ、ヘリカルスキャンなし(寝台の移動なし)で画像を取得することができる。さらに造影剤を併用することにより、脳や心臓の血管画像や潅流画像を1回の造影検査で作成することができる。
2つの管球を有するCT装置も登場しており、時間分解能のさらなる向上がみられ、さらに2つの管球に異なった電圧のX線を同時曝射することにより組織識別が可能になるなどの臨床応用が期待さ れている。
これからも、最新の情報を取り入れて画像診断の質を向上させていきたいと思います。