地域医療連携

病診連携勉強会

痛みの基礎とペインクリニックの紹介

【テーマ】
「痛みの基礎とペインクリニックの紹介」
【講演者】
麻酔科主任医長(科長) 奥村 泰久
奥村 泰久

はじめに

「痛みの基礎とペインクリニックの紹介」と題し病診連携勉強会を行った。痛みの定義からはじめの神経線維の分類、伝道路、痛みの調節機構(痛みの門調節機構、下行性疼痛抑制系など)、痛みの評価法などの話をした後、麻酔科外来で行うことの多い神経ブロックの説明をした。ここではその代表的ブロックである硬膜外具ロックと星状神経節ブロック、帯状疼痛後神経痛に代表される神経障害性疼痛について説明する。

硬膜外ブロック

硬膜外ブロックとは、麻酔科外科での疼痛管理あるいは術後痛対策として広く使用されているブロックである。顔面以外のほぼ全身の疼痛部位の除痛目的で行われる。硬膜外膣にカテーテルを留置し持続的薬剤投与も可能である。
脊髄は軟膜、くも膜、硬膜により保護されており、硬膜と黄靭帯の間の硬膜外膣に局所麻酔薬を投与する。硬膜外膣に投与された薬液は椎間孔から漏出して神経へ浸潤、神経根を包む硬膜の間隙から、硬膜を浸潤、通過して浸潤などにより分節的に効かせることが可能である。さらに局所麻酔薬の濃度を調節することにより作用領域の交感神経、感覚神経、運動神経のの分離したブロックも可能である。作用部位によっては血圧低下や呼吸抑制などが生じる可能性があるため注意が必要である。

硬膜外ブロック

星状神経節ブロック

星状神経節ブロックとは、頚部の交感神経節である星状神経節の周囲に局所麻酔薬を注入するものである。コンパートメントブロックとして星状神経節などの頚部交感神経節、節前、節後線維を遮断する。頭頚部、顔面、上肢、上胸部の疼痛疾患や末梢循環障害などに有効である。
頚部交感神経節には上頚神経節、中頚神経節、椎骨動脈神経節、星状神経節がある。星状神経節は下頚神経節、第1胸神経節(あるいは第2も)と結合したものである。

星状神経節ブロックの適応疾患

帯状疱疹後神経痛に代表される神経障害性疼痛

神経障害性疼痛は神経系の一次的な損傷や機能障害が原因となる、もしくはそれによって惹起される疼痛は末梢神経の損傷、感受性の増加、ephapseの形成とephaptic transmissionの発生(電気的cross talk)、化学的cross talk、末梢神経損傷後の中枢神経系の機能的変化(central sensitization)など様々な機序によって生じる。
神経障害性疼痛のうち帯状疱疹後神経痛はその神経支配域の知覚、痛覚が脱失しているにもかかわらず、知覚、痛覚脱失部位が痛む求心路遮断性疼痛(deafferentation pain)である。特徴的な痛みとはallodynia(異痛症)、hyperalgesia(痛覚過敏)、hypoesthesia(感覚鈍麻)などである。

神経障害性疼痛の原因

神経ブロック時の安全対策

神経ブロックは生体に針を刺入し、薬液を投与するものであり、切れはいいが重篤な合併症を起こす可能性もあり、救急蘇生の可能な準備、体制が必要である。星状神経ブロックの重篤な合併症として椎骨動脈などへの誤注入や後出血による上気道圧迫などが利、硬膜外ブロックではくも膜下膣への誤投与などが起こる可能性がある。すぐに適切な対処を行えば後遺症なく回復するが対応が遅れると生命にも危険が及ぶものである。
このことは神経ブロックに限ったものではなく他の多くの医療行為も同様である。めったに起こらないからこそ常に意識し、救急蘇生の準備をしておかなければならないと考えている。

まとめ

神経ブロックは短時間しか効果がないと考えられがちであるが、長期間効果が持続することも多く即効性もあり有用な治療法である。
麻酔科外科の治療の中心は神経ブロックであるが、補助療法として薬物療法やレーザー治療を行い、患者さん一人ひとりの身体的状況やライフスタイルを考えて、生活の質(QQL:quality of life)の維持と向上を目標に治療内容を選択している。

麻酔科ペインクリニックが扱う疾患

当院では、紹介患者さんを主に対象としたペインクリニック外来を月曜日と木曜日の午前に行っています。