CKD(慢性腎臓病)の診察の実際
【テーマ】
「CKD(慢性腎臓病)の診察の実際」
【講演者】
腎臓内科 主任医長 池口 宏
Chronic Kidney Disease(CKD)すなわち「慢性腎臓病」という聞き慣れない言葉は、日本に先駆け、2002年に初めてアメリカの米国腎臓財団がその概念を提唱した言葉です。そして、そのとき提唱された、Chronic Kidney Disease (CKD)の定義は、
- 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか(特に蛋白尿の存在が重要)
- GFR<60mL/min/1.73m2
- ≪1≫、≪2≫のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続する
というものでした。
このような概念があらためて提唱されて来た理由は次のとおりです。
- 世界的に、末期腎不全による透析患者が増加しており、医療経済上も大きな問題である。
- 糖尿病性腎症からの末期腎不全が世界的に増加している。(かつての発展途上国が先進化して疾患構成の比重が感染症から生活習慣病に移行しつつある。)
- Chronic Kidney Disease(CKD)の発症には糖尿病などの生活習慣病による動脈硬化が関与している。
- Chronic Kidney Disease(CKD)では心血管疾患、入院および死亡が多く、国民の健康を脅かす。
- 腎臓病が治療可能な時代になってきた。また、腎障害の早期から介入した方が治療効果が高いことがわかってきた。
こうした背景を踏まえて日本腎臓学会は、2007年、日常診療におけるChronic Kidney Disease(CKD)ガイドを発表した。これは、一般医家にChronic Kidney Disease(CKD)診療についてのコンセンサスを提示することを目的としており、期待されるアウトカムとして次のことを念頭に置いている。
- 腎臓専門医でなくとも一定水準の診療レベルを提供し、広くChronic Kidney Disease(CKD)の集学的治療が可能となる。
- 透析導入を遅延、腎障害に伴う心血管病を減少し、患者のQOL向上、医療費削減に貢献できる。
- Chronic Kidney Disease(CKD)診療ガイドの普及を通じて、診療を受けるサイドからもChronic Kidney Disease(CKD)に対する国民的合意が醸成されることを期待する。
そして、ガイドには具体的に、
- 生活指導はどうするか?
- 生活指導の遵守状況を何で評価するか?
- 何を持って評価するのか?
の詳細が示され、さらに、Chronic Kidney disease(CKD)のリスクファクターと薬物療法時における注意点までを網羅している。
今回の勉強会では日本腎臓学会のChronic Kidney disease(CKD)ガイドの内容を紹介し、これまでの経験例の提示を通じてChronic Kidney disease(CKD)治療の実際についてお話した。