地域医療連携

病診連携勉強会

新しい消化器内視鏡について

【テーマ】
「新しい消化器内視鏡について」
【講演者】
消化器科 主任医長 安藤 伸浩
安藤 伸浩

はじめに

内視鏡は、60年代のファイバースコープにより普及し、80年代からは電子スコープへと進歩してきました。21世紀にはいり、内視鏡はさらに進化を遂げております。当院でも平成18年7月の開院にあわせて様々な最新の内視鏡機器が導入されましたので紹介させていただきます。

経鼻内視鏡

図1 経鼻内視鏡で発見された早期胃癌
図1 経鼻内視鏡で発見された早期胃癌

先端CCDの小型化により、内視鏡の細径化が進みました。タバコよりも細い5‐6mmの径で、画像も診断に耐えうる経鼻内視鏡は、胃管のように鼻からの挿入が可能です。鼻からの挿入の利点は、検査中に会話可能であり、安心感が得られること、舌根を通過せず、咽頭反射が少なく、苦痛が少ない点です。ただし、最新の9mm前後の内視鏡と比べると画像が劣るため、精密検査には適さないという欠点があります。鎮静剤を用いた内視鏡よりは苦痛があるため、当院では特に経鼻を希望される方や鎮静剤を使う余裕がない多忙な方を対象に行っております。

ハイビジョン内視鏡

図2 同じ胃の比較
図2 同じ胃の比較

テレビのハイビジョンのように解像度を増した内視鏡です。数年前の内視鏡と比べて、約2倍の解像度があり、早期癌や微小癌の診断に威力を発揮しています。当院では通常の検査をハイビジョン内視鏡で行っております。

NBI(Narrow band imaging)

通常の内視鏡の画像にデジタル処理を行い、病変を強調して加工した画像を表示する方法です。RGB信号のうち、粘膜の浅い部分を反映する短波長である青色の信号を抽出して、擬似的に青から赤に表示します。粘膜表面の微細構造や毛細血管像が強調されます。早期癌、微小癌の診断に有効です。当院では通常検査でNBI画像も表示可能です。

鎮静・鎮痛剤の使用

全国調査では、鎮静・鎮痛剤を使用しない施設は、上部内視鏡で38%、下部内視鏡で34%です。全国的には使用する施設が多いようですが、東海地方では未使用のところが多い印象です。当院では、通常、鎮静・鎮痛剤を使用しており、上部ではジアゼパム、下部では塩酸ペチジンを用いています。利点は、患者さんの苦痛を大きく軽減できることです。ただし、麻酔による呼吸抑制などの危険があるため、術中の酸素飽和度や血圧、脈拍のモニタリングを行うとともに、専用のリカバリールームで術後1時間ほど休んでいただきます。また、患者さんには当日は、自動車などの運転を避けていただくようにお願いしています。

UPD

先端に磁気コイルのついた内視鏡で、体内の内視鏡の形や位置を、透視を用いずに表示できます。挿入時に補助的に用いることで、患者さんの苦痛の軽減に役立ちます。

硬度可変式

内視鏡に内蔵したワイヤを伸ばしたり、縮めたりすることで、内視鏡本体の硬さを変化させます。屈曲の強いところは内視鏡を柔らかくし、直線化で進めたいときは硬くします。大腸内視鏡時に、状況に応じた挿入を可能にし、苦痛が軽減できます。

ダブルバルーン小腸内視鏡

内視鏡の先端と、それにかぶせるオーバーチューブの先端にバルーンがついています。2つのバルーンを交互に膨らませたり縮めたりして、尺取り虫のように腸管を短縮させて、小腸全体を観察可能にした内視鏡です。従来、内視鏡の届かなかった小腸の観察と治療が可能であり、とくに原因不明の消化管出血に対して有用です。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

図3 ESDで切断された胃癌
図3 ESDで切断された胃癌

大きな粘膜内癌を内視鏡的に一括切除する方法です。早期癌の内視鏡治療は、従来、ポリペクトミーや粘膜切除術(EMR)が行われてきましたが、スネアというデバイスを用いるために、切除径に限界がありました。先端から出すナイフで直接、粘膜を切開し、粘膜下層を剥離するESDにより、大きさに関係なく、粘膜病変を一括切除できるようになりました。新しい処置具(切除するナイフ、止血鉗子)や送水機能付き内視鏡、最新の高周波装置の導入により、出血、穿孔などの危険性は大きく軽減され、安全に短時間で手術が行われるようになっています。

病診連携の取り組み

図4 消化器科の取り組み
図4 消化器科の取り組み

内視鏡検査は、地域・法人連携室を通じて、上部の場合、当院診察なしで、直接、予約が可能です。下部内視鏡検査は、前日に下剤を処方いただければ、直接の予約も可能です。前処置の説明がご面倒ならば当院消化器科へご紹介下さい。ご紹介いただいた際は、内視鏡以外にも、CTなどご要望に応じた検査を行うようにしております。検査の時は、苦痛の軽減、楽な検査を心がけております。また、電子カルテと内視鏡ファイリングシステムを用いて、検査直後に結果の報告作成を行い、迅速な返答を行っております。
最後に、今後も、地域の先生方と協力しあいながら、安全で質の高い医療を提供していきたいと考えておりますので、ご指導、ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。