地域医療連携

病診連携勉強会

関節リウマチの治療について

【テーマ】
「関節リウマチの治療について」
【講演者】
整形外科 主任医長 平島 幸生
平島 幸生

はじめに

関節リウマチ(以下、RA)は人口1000人に対して5~10人と比較的高い有病率を持った疾患です。RAの大多数は慢性、進行性に経過し、生涯にわたる治療が必要になります。男女比は1:4~5と女性に多く、好発年齢のピークは40歳代で、働き盛りの女性に多いと考えられます。このため、いったん発病して身体機能が障害されれば、ご本人のみならず社会全体の生産性に対する損害も大きいものになってしまいます。
身体機能の障害発生を避けるためには、なるべく早期に病気を診断し疾患のコントロールを行うことが重要となります。アメリカリウマチ学会の診断基準(1987)は①1時間以上持続する朝のこわばり、②3関節域以上の関節炎、③手,中手指関節,または近位指関節の腫脹、④対称性関節炎、⑤リウマトイド結節、⑥血清リウマトイド因子陽性、⑦X線変化、のうち4項目以上があれば診断できるというものでしたが、現在では厚労省、日本リウマチ学会の両者からそれぞれ早期RAの診断基準が発表されています。
実際の症状は、比較的小さな関節の痛みや腫れから始まることが多く、次第に大関節が侵されていきますが、高齢発症型のRAでは大関節が最初から侵される場合があります。主な全身症状として朝のこわばりや貧血、発熱、体重減少、全身倦怠感、易疲労性、リンパ節腫大、皮下結節などを認めます。

図1 関節破壊の進行
図1 関節破壊の進行

症状の進行パターンは①単周期型、②多周期寛解型、③多周期増悪型、④進行型の4つに大きく分類され、図1 関節破壊の進行疾患のコントロールを行わないと10年後には半数に高度の障害がでると言われてきました。そしてRAの平均死亡年齢は健常人と比較して10年近く短く、死亡原因は①感染症、②悪性腫瘍、③循環器疾患の順となっています。
以前は発症後徐々に関節障害が進行すると考えられていましたが、最近のデータでは発症後2年の間に急速に関節破壊が進むことがわかってきました(図1)。さらに、発症から数ヶ月以内の期間を"therapeutic window of opportunity"と呼び、この期間内に疾患のコントロールを行うことが勧められています。
診断法では本年4月より従来の検査に加えて抗CCP抗体の測定も可能になりました。今後はMRIとの組み合わせで診断の向上が見込まれます。

薬物療法

図2 生物学的製剤ガイドライン
図2 生物学的製剤ガイドライン

最近、RAに対する薬物療法は生物学的製剤をはじめとした新しい抗リウマチ薬(DMARDs)により大きく変わりつつあり、抗リウマチ薬は診断から3ヶ月以内の導入が勧められています。治療薬を治療ガイドラインでの推奨Aから選ぶ場合、第1選択薬をブシラミン(リマチル)もしくはサラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN)と考え、図2 生物学的製剤ガイドライン第2選択薬をメトトレキセート(リウマトレックス、以下MTX)と考えています。MTXはその有効性から実質上の第1選択薬、アンカードラッグとも考えられ、実際に米国では第1選択薬となっています。これらの次に選択されるのが生物学的製剤(抗TNF-α治療薬)のインフリキシマブ(レミケード)、エタネルセプト(エンブレル)や免疫調節剤のタクロリムス(プログラフ)、レフルノミド(アラバ)になると考えています。
生物学的製剤は厚生労働省研究班による使用ガイドラインが定められています(図2)。MTXの効果がない方が適応となり、肺結核などの感染症は禁忌になっています。生物学的製剤の効果はATTRACT study(インフリキシマブ)、TEMPO study(エタネルセプト)などの形で発表されており、MTXの併用にてより効果が上がっています。
非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)では、胃腸障害の合併率が低いプロドラッグやCOX-2選択的阻害薬などが有用と考えています。

手術療法

図3 関節リウマチの手術
図3 関節リウマチの手術

手術療法として①滑膜切除術、②関節形成術・固定術、③人工関節置換術などを行っています(図3)。滑膜切除術は主に膝関節、足関節、肘関節、手関節に関して行い、前2者では関節鏡を用いて(鏡視下滑膜切除術)行っています。適応は①レントゲン上で関節破壊が進行していない、関節裂隙が残存する関節、②あらゆる保存療法によって消退しない滑膜炎、③滑膜の腫脹が4~6ヶ月以上続く場合です。図3 関節リウマチの手術関節形成術は主に足趾切除形成術を、関節固定術は足関節固定術を行っています。前者の適応は高度の槌指変形、外反母趾で歩行障害が生じ、足底板などで改善しない場合です。母趾にはシリコン性のインプラントを併用する場合があります。後者の適応は距腿関節の破壊に伴う強い疼痛で、薬物療法や装具療法で対処できない場合、足関節の可動域が消失しても無痛性、変形の矯正、支持性により歩行障害が改善する症例です。人工関節置換術は主に股関節、膝関節に対して行っていますが、肩関節、肘関節に対しても行う場合があります。適応はレントゲン上で関節裂隙が消失し、関節破壊を認め、疼痛を伴う機能障害がある場合です。講演中はそれぞれに画像、術中写真などを合わせて紹介させていただきました。

おわりに

病診連携のモデルとしてアメリカリウマチ学会のガイドラインを紹介させていただきました(図4)。このモデルにこだわることなく皆様のご施設と当院との連携がスムーズに進みますよう、ご協力・ご支援をお願い申し上げます。

図4 アメリカリウマチ学会によるガイドライン
図4 アメリカリウマチ学会によるガイドライン

参考文献:
診断のマニュアルとEBMに基づく治療ガイドライン(厚生労働省研究班)