地域医療連携

病診連携勉強会

日常学的所診療における神経見と画像診断

【テーマ】
「日常学的所診療における神経見と画像診断」
【講演者】
神経内科 副医長 木村 彰宏
木村 彰宏

はじめに

近年はMRIをはじめとする画像診断が普及し、様々な疾患の診断が比較的容易になりつつあります。全く自覚症状のない無症候性脳梗塞もMRIによって発見可能となり、患者さんの画像診断へのニーズも高まっております。

今回の勉強会では「めまい、頭痛、しびれ」など重症感に乏しい主訴で当科を受診し、神経学所見と画像診断の組み合わせによって診断が可能であった症例を提示させていただきました。地域で開業されている医療機関に初診で訪れるケースも高い症例ではないかと考えました。

脳血管障害の現況

脳血管障害は年間死亡者数13万2千人、総死亡数に占める割合13.8%で第3位、総患者数では147万4千人と、癌(127万)、心疾患(106万)よりも多い疾患です。特に脳梗塞は年齢が最も重大な危険因子であるため、高齢化社会がいっそう進むわが国においては益々増加する疾患と考えられます。脳血管障害のもうひとつの側面として後遺障害があげられます。寝たきり患者の原因疾患として第一位が脳血管障害です。
今回提示させていただいた症例でも、大半は脳梗塞の症例でした。明らかに片麻痺は構音障害があれば、脳血管障害を鑑別診断の第一に考えるのは容易ですが、麻痺が認められないケースも多数あり場合によっては除外診断の目的で施行した画像診断で、脳血管障害が診断されるケースもあります。
症状の軽微は脳血管障害でもその事実が把握できれば、血圧の管理や抗血小板薬などの適応など今後の診療に有益な情報となります。

変性疾患の診断

神経内科の取り扱う疾患として脳血管障害についで多い疾患が変性疾患です。変性疾患は神経学的所見が診断の中心ですが、近年の画像診断の進歩によってMRIや脳血流シンチなどが診断において占める重要性が増しつつあります。パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、アルツハイマー病などが代表です。慢性進行性の症状がある場合は一度、当科にご紹介いただければ幸いです。

症例の提示

症例1 89歳 男性

主訴 意識消失発作
既往歴 30年前脳梗塞
現病歴 高血圧、高脂血症にて近医通院中。1週間前の夕食後に約15分間の意識消失があったがその後は通常通りだったため、様子をみていた。デイケアにて昼食後に10分間の意識消失あり当院を受診した。
現症 意識清明、血圧108/60、脳神経系:特記すべきことなし。筋力:左上肢に軽度の筋力低下、両下肢で中等度の筋力低下あり、感覚系:左半身にて軽度の感覚障害
写真1 MRA2枚(右中大脳動脈の描出不良、右頸部内頸動脈の狭窄)
写真2 SPECT 2枚(右中大脳動脈領域の血流低下)
診断 右内頸動脈狭窄
右中大脳動脈の抽出不良
写真1
右中大脳動脈の抽出不良
右頸部内頸動脈の狭窄
写真1
右頸部内頸動脈の狭窄
右中大脳動脈領域の血流低下
写真2
右中大脳動脈領域の血流低下
右中大脳動脈領域の血流低下
写真2
右中大脳動脈領域の血流低下

症例2 54歳女性

主訴 頭痛、複視
既往歴 特記すべきことなし
現病歴 2日前から頭痛と複視が出現したため近医を受診、当科を紹介された。
現症 軽度の左動眼神経麻痺(内眼筋障害なし)、中等度の左外転神経麻痺
他の脳神経系異常なし、運動系、感覚系:特記すべきことなし
検査所見:末梢血、生化特記すべきことなし、甲状腺機能異常なし
写真3 上眼静脈のflowvoid sign
診断 Tolosa-Hunt症候群
上眼静脈のflowvoid sign
写真3
上眼静脈のflowvoid sign

症例1は以前より左不全片麻痺がありましたが、MRAにて明らかな狭窄があり、脳血流シンチにて血流低下を認めました。降圧薬が処方されておりましたが、血圧低下にて神経症状が出現したと考えられます。
症例2は頭痛と複視の症例ですが、MRIにて上眼静脈に拡張を認め上記と診断し、ステロイドにて症状の軽快を認めました。

当院では、高磁場MRI、高性能ヘリカルCT、ガンマカメラ(SPECT)があり迅速な診断が可能ですので是非ご利用ください。