診療科案内

脳神経外科

概要・特色

  • 当院脳神経外科の基本⽅針は、「先端医療と地域密着医療の両⽴」です。当科が特に重点を置いて取り組んでいることは、脳腫瘍の集学的治療です。2006年8⽉より術中MRI搭載⼿術室、“ブレインスイート”を稼働し、悪性グリオーマや下垂体腫瘍などの脳腫瘍を中⼼とした術中MRIを用いた画像誘導⼿術を⾏っております。ブレインスイートにて術中MRIを用いて実施した手術は、2020年までに計1150件(そのうち脳腫瘍は850件)行いました。当科は、ロボティック技術を取り入れた高性能手術用顕微鏡 KINEVO900(カールツアイス社製)をはじめ2台の⼿術⽤顕微鏡を所有しております。高精度放射線装置ノバリスによる脳脊髄腫瘍、脳脊髄動静脈奇形に対する定位放射線治療も⾏っております。また、悪性グリオーマ患者に対するテモゾロミド、アバスチンを⽤いた化学療法も⾏っております。
  • 脳血管障害(脳動脈瘤破裂くも膜下出⾎に対する開頭クリッピング)やコイル塞栓術(名古屋大学脳神経外科血管内グループの協力)に対しても緊急対応可能です。急性期脳梗塞に対しましては血栓溶解療法(tPA投与)も行っております。また脳主幹動脈に対する血行再建術(頚動脈内膜剥離術や血管吻合術)も実施しております。⾼⾎圧性脳出⾎に対しては、より体への負担が少ない内視鏡下⾎腫除去術にも緊急対応可能です。
  • 当科では、機能的脳神経外科疾患にも⼒を⼊れております。機能脳神経外科認定医によるパーキンソン病などの深部電極留置術、難治性疼痛に対する薬物治療、脳脊髄刺激電極留置術を実施しており、機能的脳神経外科学会認定施設となっております。また、脳卒中後の痙縮に対するボトックス治療とバクロフェン持続静注療法も実施しております。病気を完治させる治療ではありませんが、患者さんの苦痛軽減、ご家族の介護負担軽減を⽬指しております。

対応疾患・症状

脳腫瘍(グリオーマ、特に悪性度の高い膠芽腫や退形成性星細胞腫、髄膜腫、下垂体腫瘍、転移性脳腫瘍など)、脳梗塞、脳出血、脳動脈瘤、脳脊髄動静脈奇形、機能的疾患(パーキンソン病、難治性疼痛、痙縮、顔面痙攣、三叉神経痛など)、脊椎脊髄疾患(脊椎変性疾患、脊髄腫瘍など)

主な治療・検査

  • 脳腫瘍手術
    先端脳神経外科⼿術室“ブレインスイート”において、脳腫瘍、特にグリオーマ摘出術を中⼼に、術中MRI、神経ナビゲーションシステム、神経電気⽣理学的モニタリング、術中蛍光診断を駆使した画像誘導・モニタリング⽀援⼿術を⾏っています。
  • 下垂体腫瘍手術
    下垂体腫瘍に対し、神経内視鏡を⽤いた経⿐的摘出術を⾏っています。下垂体腫瘍摘出においても、“ブレインスイート”での画像誘導⼿術を応⽤しています。
  • 脳血管障害治療
    脳⾎管障害(脳出⾎、くも膜下出⾎等)に対し、急性期に顕微鏡下⼿術が可能です。脳出⾎に対しては神経内視鏡を⽤いた体への負担が少ない⾎腫除去術を⾏っています。未破裂脳動脈瘤に対するクリッピング術、頚動脈内膜剥離術、⾎液吻合術にも、術中MRIや神経内視鏡を応⽤して安全で確実な⼿術が実践できるよう取り組んでいます。
  • tPA療法
    当院では緊急MRI検査の実施が可能であり、発症から4.5時間以内の急性期脳梗塞に対してtPAを用いた血栓溶解療法の実施が可能です。
  • 血栓回収療法
    脳主幹動脈の閉塞に対して、名古屋大学脳神経外科の協力のもとカテーテルを用いた血栓回収療法が実施可能です。より緊急性の高い状況では近隣の関連施設への転院搬送を迅速に手配します。
  • 頭部外傷治療
    頭部外傷に対し、緊急で開頭術、穿頭術に対応しています。
  • 神経血管減圧術
    三叉神経痛および顔⾯痙攣などに対する根治手術である神経血管減圧術が実施可能です。
  • 深部電極留置術
    パーキンソン病や不随意運動症に対する深部電極留置などの定位脳手術を行うことが可能です。
  • 脊髄刺激電極留置術
    難治性疼痛に対して脊柱管内に電極を挿入して電気刺激により疼痛緩和を行う手術を実施しています。
  • ボトックス療法、バクロフェン持続療法
    脳卒中後痙縮や外傷後遺症などの痙縮に対してボトックス注射やバクロフェン持続投与のためのポンプ埋め込み手術が実施可能です。
  • 脊髄脊椎⼿術
    頚椎疾患(頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍等)等に対して除圧術、固定術、腫瘍摘出術が実施可能です。
  • 機能MRI検査・PET検査・3次元CT脳⾎管撮影
    これら術前検査を迅速に⾏い、画像情報を“ブレインスイート”における⼿術の治療計画に利⽤しています。くも膜下出血の出血源確認のために緊急で三次元CT脳血管撮影が実施できます。
  • 放射線治療
    高精度放射線治療装置(Versa HD)を用いて脳脊髄脊椎腫瘍や脳脊髄⾎管奇形に対する定位放射線治療を⾏っています。
  • 脳⾎管撮影
    脳動脈瘤や解離性脳動脈瘤破裂に対するコイル塞栓術を行うための緊急脳血管撮影が可能です。

医師紹介

主な実績

2020年 2021年 2022年
治療・検査 件数 治療・検査 件数 治療・検査 件数
開頭腫瘍摘出術 46 開頭腫瘍摘出術 45 開頭腫瘍摘出術 30
開頭動脈瘤クリッピング術 3 開頭動脈瘤クリッピング術 9 開頭動脈瘤クリッピング術 4
開頭血腫除去術(脳出血) 2 開頭血腫除去術(脳出血) - 開頭血腫除去術(脳出血) -
開頭血腫除去術(外傷) 2 開頭血腫除去術(外傷) 3 開頭血腫除去術(外傷) -
頸部頸動脈内膜剥離術 12 頸部頸動脈内膜剥離術 8 頸部頸動脈内膜剥離術 8
内視鏡的経蝶形骨洞手術 6 内視鏡的経蝶形骨洞手術 1 内視鏡的経蝶形骨洞手術 3
定位脳手術(生検) 1 定位脳手術(生検) 4 定位脳手術(生検) 4
定位脳手術(機能) 9 定位脳手術(機能) 8 定位脳手術(機能) 17
穿頭慢性硬膜下血腫洗浄術 19 穿頭慢性硬膜下血腫洗浄術 18 穿頭慢性硬膜下血腫洗浄術 44
脳室腹腔短絡術 6 脳室腹腔短絡術 8 脳室腹腔短絡術 -
脊髄刺激電極留置術 6 脊髄刺激電極留置術 10 脊髄刺激電極留置術 12
脊腔内バクロフェン注入療法 15 脊腔内バクロフェン注入療法 17 脊腔内バクロフェン注入療法 22
その他 40 その他 30 その他 27

ノバリス:旧放射線治療装置

脳神経外科をもっと詳しく

内視鏡手術

現在の手術においては患者さんの負担を軽減する“低侵襲”が求められています。脳神経外科手術にも内視鏡が積極的に利用されるようになってきています。代表的な疾患は下垂体腫瘍です。下垂体腫瘍は鼻腔を経由した経鼻的経蝶形骨洞手術が行われますが、最近では内視鏡を使用することにより、より低侵襲な手術が実施できるようになっております。手術は鼻腔内で行われるため、表面上は術創が見えることはありません。

内視鏡の特徴である近接して術野を拡大できるという利点を活かして、穿頭という小さな穴を1ヶ所あけて脳出血を除去したり、脳室という髄液の貯留している空間内の腫瘍を摘出する低侵襲手術ができるようになりました。また髄液の循環が悪くなり脳室内に髄液が貯まって認知障害、歩行障害、失禁などの症状が出現する非交通性水頭症に対して第3脳室という脳室の底部に穴を開けて髄液の循環を改善させる第三脳室底開窓術も内視鏡を使用して低侵襲に実施できるようになりました。

当院でも、これらの内視鏡手術を実施することができます。またこれらの手術をブレインスイートで実施し術中MRIを行うことで治療効果を直ぐに確認することができるため安全で確実な手術の遂行が可能になっています。

脳梗塞

脳梗塞は脳血管が詰まることで発症します。脳血管が詰まる原因によってアテローム血栓性脳梗塞(動脈硬化で血管が細くなり閉塞する)と脳塞栓症(心原性脳塞栓症:心房細動などの不整脈の影響で心臓に血栓が生じ、それが剥がれて脳血管を閉塞する)に大別されます。脳は虚血(血流が足りなくなること)に極めて弱く、後遺症を軽減させるために発症後できる限り早期に治療することが必要です。

当院では放射線科の協力の下、24時間体制で頭部CT、MRI検査を実施することが可能で、脳梗塞の早期診断に取り組んでおります。発症4.5時間以内の超急性期脳梗塞に対しては患者さんの状態を十分に検討した上でtPAを用いた血栓溶解療法を実施しています。最近注目を集めているカテーテルを用いた血栓回収療法は、近隣の関連病院との間でバックアップ体制を構築し実施しております。