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【1】病態
ゴーシェ病(Gaucher disease)は、細胞内リソソーム(ライソゾーム)において加水分解酵素であるβ-グルコセレブロシダーゼ活性が正常値より不足あるいは欠損しているため、この酵素で本来分解されるべき糖脂質のグルコセレブロシドが肝臓、脾臓、骨髄(マクロファージ)などに蓄積する先天性代謝異常疾患です。
そのため、肝臓、脾臓などの臓器の腫大や、骨髄では、造血能の低下やゴーシェ細胞(Gaucher cell)の増加が認められます。また、脾腫に伴い、赤血球や血小板の破壊が亢進し、貧血や血小板減少症などが認められます。骨症状としては、骨髄にゴーシェ細胞が蓄積し、骨髄内の機械的閉塞や、血管攣縮、血栓症、血流障害等による激しい痛み、局所的虚血性壊死や、骨幹細胞部での骨造成プロセスの障害による変形がみられ、病的骨折や、骨髄炎等の合併症がみられることがあります。神経症状としては、精神運動発達遅延、けいれん、頸部後屈、開口困難、斜視、呼吸不全などがみられます。わが国では約100名の患者様が確認されています。
臨床所見により1型(慢性非神経型, 成人型)、2型(急性神経型, 乳児型)、3型(亜急性神経型, 若年型)に分類され、このうち1型においては酵素補充療法が標準的治療法として確立されています。しかし、2型、3型に関しては、大量の酵素を補充することにより一部に有効性が報告されているものの、神経症状を含め今後解決すべき問題点も多く、基礎研究および臨床研究には、さらなる発展が期待されています。
【2】症状
a)肝・脾腫
糖脂質(グルコセレブロシド)が蓄積することにより、臓器の腫大が認められます。
b)貧血、血小板減少症
骨髄のゴーシェ細胞が増加することによる造血能の低下や、脾腫による赤血球、血小板の破壊の亢進がみられます。
c)骨症状
骨髄にゴーシェ細胞が蓄積し、骨髄内の機械的閉塞、血管攣縮・血栓症、血流障害等による激しい痛み、局所的虚血性壊死や、骨幹細胞部での骨造成プロセス障害による変形がみられます。骨皮質が圧迫され薄くなり、病的な骨折や、骨髄炎等の合併症を引き起こします。
d)神経症状
精神運動発達遅延、けいれん、頸部後屈、開口困難、斜視などがみられます。
【3】臨床分類
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1型(成人型) |
2型(乳児型) |
3型(若年型) |
特徴 |
発症年齢が幼児から成人にわたり、慢性に経過します。神経症状を伴わず、肝脾腫、骨症状が主症状です。 |
乳児期(生後3〜5ヶ月頃)に発症し、著明な神経症状(精神運動発達遅延、けいれん、頸部後屈、開口困難、斜視)を伴います。胎児水腫が主症状です。 |
乳幼児期に徐々に発症し、神経症状を伴いますが、2型に比べて緩徐な経過をたどります。3型はさらに3つの亜型に分類されます。しばしば肝脾腫が初発症状となります。
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発生頻度 |
1/480,000 |
1/800,000 |
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国内患者数 (推定) |
約50名 |
約10〜20名 |
約20〜30名 |
【4】酵素補充療法
ゴーシェ病は、β-グルコセレブロシダーゼという酵素がリソソーム内でつくられないために、糖脂質(グルコセレブロシド)を分解することができず、そのためグルコセレブロシドが体内に蓄積してしまう遺伝性の代謝異常疾患です。
酵素補充療法は、この欠損している酵素を製剤化して体外から点滴で補充し、蓄積している糖脂質(グルコセレブロシド)を分解する治療法です。本邦では1998年3月にイミグルセラーゼ(遺伝子組換え)がゴーシェ病の治療薬として認可を受けており、セレザイム®として販売されています。
現在(2007年7月)、本邦では約90名の方が酵素補充療法を受けています。
a) 用法・用量
投与量は、2週間に1回、イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)として体重1kg当たり60単位を1単位/ kg/分を超えない注入速度で投与します。1回の投与には、1時間から2時間ほどかかります。
また、一定期間投与した後に治療効果を判定し、良好な改善状態が持続してみられた場合には、維持用量として初期量より減量する場合があります。
b) セレザイム®(イミグルセラーゼ)の副作用
日本における臨床試験及び市販後の安全性定期報告により報告された症例54例中、14例(25.9%)に副作用が認められました。その主なものは、嘔気、嘔吐、蕁麻疹、発疹、白血球増加各2例(3.7%)でした。
海外の症例2365例中、約9.8%に副作用が認められています。過敏症を示唆する副作用は約4.4%、その他の副作用は約5.4%で認められました。報告された主な副作用は以下の通りです。
1)重大な副作用
アナフィラキシー様反応:アナフィラキシー様反応(そう痒感、潮紅、蕁麻疹、血管浮腫、胸部不快感、呼吸困難、喘鳴、血圧低下、チアノーゼ等の過敏反応)があらわれることがあります。
2)その他の主な副作用
@過敏症 蕁麻疹、発疹、そう痒感、潮紅
A消化器 嘔気、嘔吐、腹痛、下痢
B循環器 頻脈
C皮膚 紅斑、湿疹、爪変形、一過性の末梢牲浮腫
D全身症状 頭痛、倦怠感、発熱、疲労、悪寒、背部痛、めまい
E血液系 白血球増加、赤血球減少、ヘモグロビン減少
F注射部位 不快感、掻痒感、灼熱感、腫脹及び無菌性膿瘍
G肝臓 AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇
【5】骨髄移植療法
酵素活性の異常を伴った血液細胞を正常な血液細胞に置き換える治療法です。骨髄移植が成功すれば、肝脾腫、血小板減少、骨痛等の骨症状の改善がみられますが、神経症状に対する明らかな結論は得られていません。また、ドナーの選択が困難であることや合併症の程度を考えた場合、1型(成人型)においては酵素補充療法が標準的な治療法と考えられます。
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