今回導入された3T-MRIについて
平成24年6月19日(火)、病診連携システム登録医の先生方をお招きして勉強会を開催いたしました。勉強会の内容をまとめましたので、以下にご紹介いたします。
はじめに
MRI装置がわが国に導入されてから30年ほどの月日が経ち、この装置は今や臨床医学に欠かせない診断機器となっているのは、ご承知のとおりです。
中でも現在の最上位機種である3T-MRIが認可されたのは2003年のことです。

当院でも今年4月に待望の3T-MRIが導入され、稼動を始めました。
これまでは静磁場強度1.5TのMRI装置1台がフル稼働の状態で臨床各科と人間ドック、地域連携の検査を行ってきました。4月からは前述の3T-MRIの造設に加え、老朽化した1.5T装置についてもアップデートを行い最新の1.5T装置になりました。
今回は最新の3T-MRI装置の特徴をお伝えできればと思います。
3T-MRIの特異性について

3Tの特異性にはメリットもデメリットも含まれていますが、メリットとしてはS/N比(SNR)の上昇による高い空間および時間分解能、MRAの高画質化、科学シフトの影響上昇などがあがります。以下に具体的に見ていきます。
画質(分解能)の向上
静磁場強度が3Tに上昇すると、信号とノイズの比であるS/N比は1.5Tの約2倍になり結果として、細かいところがよく見えるようになります。S/N比が大きくなるほど高画質になるので、従来あまりよく見えなかった細かいところや、手、足もきれいな画像が得られるようになります。さらなる高分解能画像や高速画像の撮像が可能となっています。
MRA(血管系の抽出)

3T-MRIにおける血管を選択的に抽出するMRAでは、S/N比の向上などもあって画質が著明に向上し、1.5Tよりさらにきれいで細い血管まで検出できるようになりました。
神経線維の走行を見る拡散テンソル画像

拡散テンソル画像においても1.5Tより画質向上が見られます。このデータから神経線維の走行を画像化することで人体の運動をつかさどる錐体路の描出ができ、脳腫瘍の手術などに有用です。
3T-MRIのデメリットについて
MRI画像を構成する重要なパラメータである緩和時間が延長するので、良好なコントラストを得るためには撮像時間を長くする必要があります。そのため、動きのある腹部臓器の撮像にはやや不利になります。また、化学シフトアーチファクトという脂肪と水の間に出現するアーチファクトが強くなるのも欠点の一つです。化学シフトアーチファクトを目立たないようにするとS/N比が低下して画質が劣化しやすくなります。
またSARといって生体内における電磁波の組織吸収率が増大します。よって周波数が高いと電子レンジのように体内の局所の温度が上昇します。SARは静磁場強度の二乗に比例するため、3T-MRIでは撮像条件(撮影スライス枚数やマトリックス)に一定の制限がかかります。
3T-MRIの将来展望
3T-MRIの欠点は技術的にほぼ解決されてきており、さらに優れた臨床データを提供してくれる有力なツールとなっていくものと思います。
病診連携の先生方へ
この度、当院は1.5Tと3TのMRI装置を有することで検査枠に余裕ができ、比較的速やかに検査をお受けすることが可能となりました。また従来通り、検査の実施とともに、画像診断専門医による迅速な画像診断報告書の作製も行っています。今後ともご利用いただきやすくなったMRIをはじめ、CT、PET/CTともどもご活用いただくよう御願いいたします。